パルジファル

昨日は某ホールで某レコーディング。お題はワーグナーの「パルジファル前奏曲」の編曲版。
さすがに全曲版のスコアは重たかったのでピアノ伴奏譜を持ち込んで、それを眺めながらのレコーディング。
ワーグナーは、というか「パルジファル」は、僕がそもそもドイツにはまるきっかけとなった作品。82年に初めてバイロイトに行ってレヴァイン指揮、ゲッツ・フリードリッヒ演出のパルジファル初演から100周年記念という上演を体験して本当にぶっとんだ。何故かそれから二年後ドイツの音大に入った時は古楽の道を目指していたわけではあるが、とは言ってもワーグナーに対する情熱が消えてしまった訳ではなかった。
何しろオペラ劇場でのワーグナー上演はドイツ国内に限らず面白そうなものがあれば必ず出向いていたし、毎年のバイロイト詣でも「ほぼ」かかしたことはなかった。
それどころか当時は週末良く知人の家で音大の仲間が集まってワーグナーのオペラをやるパーティーがあって、僕はいつもピアノ伴奏をしていた。なんて言うとなんか凄そうですが(笑)、なんてことはない素人歌手が集まって、なかには歌手でないやつも加わって、ヘタクソな伴奏のもと、ワーグナーのオペラ(っていっちゃいけないんだけどまあ許してね)をつっかえながらやる訳。でも下手とは言えドイツ人だからね、なかなか面白いんですよ。みんな芝居っ気たっぷりだし、僕にはやや難解なワーグナーのテキストも色々と教えてもらえたし。足りない時は僕も端役を歌わされたりして。大変なプロジェクト(爆)だったけど、この集まりで僕は「オランダ人」移行のワーグナーの作品はほぼ全て一応通しで弾いたことになるのです(笑)。実態はもうつっかえながら間違いながら、止まりながら、笑い転げながら、ですごかったけどね。でもそのおかげでワーグナーの和声というのは自分にとって「肥し」になっているんだなあ、と思う時もあります。
そういえば別の集まりではプッチーニモーツァルトも沢山やったし、音大とは関係なく素人が集まって室内楽や歌曲をやるということも良くありました。僕がお世話になっていたドイツ銀行のお偉方さんは全くの素人ですがシューベルトを歌わせるとなかなかのものでした。

よくよく考えてもみれば、あの当時って何の目的もなくただただ音楽を楽しんで演奏していた。ふと気がついてみるとそういう機会って実に少ないというか無いに等しい。これってとっても贅沢だけど大事なことかも??