ガブリエル・リプキン&ギドン・クレーメル

BSの番組でガブリエル・リプキンというチェリストの演奏を初めて聴いた(見た)。
驚いた〜!!チェロという楽器には関わりが深くて学生時代から本当に沢山のチェリストの演奏を聴いてきたけど、リプキンのようなチェリストは初めて聴いた。というかこんな音楽は初めて聴いた、と言ってもいいくらい衝撃的だった。
その衝撃を言葉にするのは余りにも難しい。何と書いても陳腐になってしまうだけ・・・
ただ一つ言えるのはリプキンは美音で勝負するタイプのチェリストではないといこと。少なくとも彼の音自体は僕の趣味ではなかった。そこが何とも面白かった。僕は普通楽器の音色にはこだわるし、チェロみたいな楽器の場合、音色やビブラートが自分の趣味でないと聴く気にもなれないからだ。そういう意味で彼のチェロは楽器を超越しているところがあると思う。とにかく音楽自体がすさまじいのだ。
そんなことを思いながら、同じく最近BSで見たヴァイオリニスト、ギドン・クレーメルのことを思い出した。クレーメルも決して音の美しさで勝負するタイプではない。というかそれが自身の音楽表現に必要とあれば汚い音を出すことを厭わない人だ。でも実はクレーメルもリプキンも必要とあらば凄く美しい音を出せる、というのも面白い。
そんなことを思っていたら今度はクレーメルが「クレメラータ・バルティカ」という自身の室内管弦楽団を率いての来日公演の放映があった。その一曲目が何とマーラー交響曲10番アダージョ弦楽合奏編曲版!!クレーメルコンマスになってのマーラー交響曲が編曲版とは言え聴けるとは!?!?
そして演奏は凄まじく美しかった。単なる美音の美しいではなくて破綻寸前まで追い込むような凄みに溢れた美しさだった。総勢20名に満たない小編成だったけど一人一人が気迫に満ちた演奏で、アンサンブルとしても秀逸。はさすがにノンビブラートではなかったが(笑)、ビブラートに関しても実に全員の意思統一が感じられてこの点も素晴らしかった。
こんな演奏を聴いてしまうと皆ビブラートがまちまちで(管の一部は凄まじいビブラート、一部はノンビブラート、弦は24時間フルのビブラート)後ろのプルトの方がダラダラと弾いている大オーケストラの演奏なんてとても聴く気にはなれない。
リプキンのビブラートも(好みではなかったけど)面白かったなあ。この人のバッハなんてどうなんだろう?と思っていたら、何と今年もやってくるのですね。しかもウチから近い(毎月録音の仕事で行っている)橋本のホールで無伴奏チェロ曲のコンサートをやるではないか!!!!これは是非とも行かなければ。。。。