ネーチャー・サウンド・オーケストラ その3

さて前回随分大雑把に書いてしまったけど、初めてジョーさんにお会いした折に「この前奄美で録ってきた音です」と二枚のCDを頂いた。早速うちに帰ってきいたのだが、もうビックリ!!中でも奄美の「森の音」というCDが物凄かった。こんな凄い音は聞いたことがない。前回も書いたけど僕も自然の音を録音したり他人が録音したものを色々な機会に利用したりで、自然音に関しては随分色々と聞いてきた。そんな僕でも全く体感したことの無い音だったのだ。勿論バイノーラルマイクや最先端の機材を操るジョーさんならではの録音テクニックというものもある。しかし一番大事なのは「自然音」に対するジョーさんの姿勢なのではないだろうか?ジョーさんは良くそのことを「God Made Sound」と言う言葉で表現する。自然の音は神様が作ったそのまま、だから完璧に美しい。その美しさに対する畏敬の念みたいなものがジョーさんの音には深ーく感じられる。(実際自然の音を録音して作品にするというのは並大抵の作業ではないのだ。)

そんなジョーさんの音と僕は(演奏者としては)それ程気楽に向き合うことが出来ない部分もあった。今までにも波の音や川のせせらぎの音をバックにピアノを弾いたりするのは好んでやってきたことは確かではあるが、それはある意味とっても安直な「世界観の構築」であって、ジョーさんの音を相手にそんなことをやっては失礼な気がした。

そもそも僕等が普通に音楽を演奏しながら「自然音」を流すという場合、自然音の扱いはいわゆる「効果音」であってあくまで主役は音楽だ。そして自然音が「その程度」にしか扱われていないから、5分か10分流すだけで飽きてきてマンネリになってしまう。

でもジョーさんと一緒にやるということは、どちらも主役でありそのバランスが命だと思ってきた。考えてもみればジョーさんに出会った頃ジョーさんがステージに立って自然音を流すライブをやるアーティストになるなんて思っていなかった。でも僕は最初から何かそんなことを漠然とながら考えていたような気がする。

ただ一緒にやるとなると、こちらがどういう音楽を演奏するか?ということも非常にシビアな問題である。何しろ相手は「God Made Sound」なのだ(笑)。どうあがいても勝ち目はない。ただ何か作られた、練られた楽曲を演奏するよりも、スペースを生かした即興演奏みたいなものの方が自然音とのマッチングは良いような気がする。(勿論これは僕がそういう演奏が好きだ、得意としている、ということもあるのだが)

つまり「God Made Sound」に対抗しても意味はない。さからわずに感興の赴くままに「God Made Sound」と対話していく、というスタイルが一番良いのだと思う。